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肩こりと頚部痛・腰痛の原因と5つの対策方法 2026年度版

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座りすぎが頚部痛(首の痛み)と腰痛を引き起こすメカニズムを、世界疾病負荷研究(GBD 2021)と2本のメタ解析をもとに、脳神経外科専門医が解説します。痛みは単なる筋肉の問題ではなく、ストレスによる神経の過敏化(中枢性感作)も大きく関与しています。今日からできる5つの予防策もご紹介しますので、頑張って読んでみてください。

目次

監修:我妻敬一(脳神経外科専門医・脳卒中専門医)
大阪市天王寺区 あづま脳神経外科リハビリクリニック 院長 脳神経外科臨床経験25年以上


はじめに:ストレートネックや猫背は当たり前

朝食、通勤電車、デスクワーク、昼食、帰宅後のソファなど、一日を通して座り続けている男性の日常を並べた比較画像
皆さん、整形外科や整骨院で「ストレートネックですね」「首・肩がカチカチですね」と言われたことはありませんか?

頭痛、肩こり、首の痛み、腰痛、坐骨神経痛・・・身体のどこかに、いつも痛みを感じていませんか?

街を歩けば、「肩こり」「腰痛」の看板があちこちに目につきます。整形外科や整骨院はどこも混み合い、ストレッチやヨガ、ピラティスの教室は大人気です。

 

では、なぜこれほど多くの人が身体の痛みに悩んでいるのでしょうか?

その大きな原因は「座りすぎ」です。

 

最初にお伝えしておきますが、世の中のほとんどの人が、ストレートネックであり、猫背ですからね!じゃない人を探す方が珍しいですからね!

さて、私たち現代人は、驚くほど長い時間を座って過ごしています。
それどころか、「座る場所を求めて動いている」と言っても過言ではありません。


子供の頃から学校で座ることを義務付けられて、じっと座ることが正しいとされてきました。
その呪縛から私たちは逃れられないでいるのです。


朝起きて支度を終えたら、食卓に座る。駅まで歩いたら、電車の中で空いている席を探す。

会社に着いたらデスクに座ってパソコン作業。昼食もデスクで済ませる。

トイレから戻れば、またデスクに座る。合間にスマホを触り、時間が来たらパソコン作業を再開。

疲れた帰り道、電車で座れなければ一本遅らせてでも座りたい。

友人とお茶や食事をするときも、当然座って過ごす。帰宅したらソファに座ってくつろぎ、そしておやすみなさい。

こうして振り返ると、私たちは一日中、座る場所にアンテナを張りながら生活していることに気づきませんか?

座り続けると身体はどうなるのか ― 姿勢崩壊のメカニズム

 

座っていると、背中は自然と丸くなり、腰に張りが出てきます。

やがて頭の位置が前に傾くことで、その重い頭を支えようと首の筋肉が張り、肩は内側に巻き込まれていきます。

 

その結果、肩こり、首の痛み、肩甲骨の内側の痛み、背中の張り、そして腰痛が生じます。

つまり、これらの痛みはすべて、長時間座り続ける姿勢が大きな悪化要因になっているのです。

 

さらに問題なのは、この変化が一時的なものでは終わらないことです。

背骨を支えている靭帯のうち、特に背中側の靭帯は、丸まった姿勢によって引き伸ばされ続けることで次第にゆるんでいきます。その結果、背骨全体が後弯化(後ろに丸まる方向への変形)を起こしていきます。

 

こうなると、背中が丸まった状態が「普通」になり、立っていても背中が曲がったまま、あるいは頭が前に突き出た姿勢が定着してしまいます。

 

ここに骨粗鬆症が加わると、事態はさらに深刻です。

尻もちなどの衝撃で圧迫骨折が起きると、背中の後弯はいっそう進みます。正常な骨格のバランスが崩れるため、僧帽筋・脊柱起立筋・腸腰筋といった姿勢を維持するための筋肉が常に緊張し続けなければならず、これが慢性的な痛みの原因となるのです。

 

そこで、今回は最新の疫学研究(GBD 2021)と、2つのメタ解析を元に、頭痛にも繋がる肩こりや頚部痛、そして多くの人が困っている腰痛の原因と対策法を紐解いて、その対策について解説します。


第1章 世界で8億人が苦しむ頚部痛と腰痛
   ・・・GBD 2021の疫学データ

 

頚部痛や腰痛が、日本だけでなく世界規模の健康問題であることをご存知ですか。

 

2024年に発表された「世界疾病負荷研究(GBD 2021)」は、1990年から2020年までの頚部痛の実態を系統的に分析し、2050年までの将来予測を行った大規模疫学研究です。

頚部痛の世界的な有病率と障害生存年(YLDs)

 

2020年時点で、世界中の頚部痛をもつ人は約2億300万人。1990年は1億1,500万人だったので、わずか30年で77.3%も増加しています。年齢を調整した有病率は10万人あたり約2,450人、障害生存年(YLDs:痛みなどの障害を抱えて生活している年数)は10万人あたり244です。

 

そして、腰痛は約6億1900万人で、YLD率は10万人あたり約832、これは全371疾患・傷害の中で世界第1位です。

頚部痛の244はその約29%にあたりますが、腰痛と頚部痛を合算すると10万人あたり約1,076となり、これだけで虚血性心疾患や脳血管障害に次ぐ世界第4位のDALYs(障害調整生命年)の原因となっています。

 

さらに、GBD 2021では25〜64歳の労働年齢層において、腰痛と頚部痛の合計がYLDsの第1位の原因と報告されています。先進国では、ほぼ全ての国でこの傾向が確認されています。

 

頚部痛や腰痛は虚血性心疾患や脳血管障害と違って、命を奪う病気ではありません。しかし、日常生活の質を確実にむしばみ、長い年月にわたって生活に影響を及ぼし続ける、とても厄介な病気なのです。

頚部痛の性差:女性は男性の約1.4倍

 

GBD 2021では、年齢標準化有病率が10万人あたり女性は約2,890人であるのに対して、男性は約2,000人でした。つまり、女性は男性の約1.4倍の頻度で頚部痛に苦しんでいることになります。

 

この差の背景には、女性ホルモンや体重が関与していて、女性は男性に比べて一般的に筋肉が少ないからと考えられています。

最も有病率が高い年齢層:45〜74歳の働き盛り世代

 

男女ともに、有病率とYLD率が最も高い年齢層は45歳から74歳でした。つまり、社会の中心で働き、家庭を支える世代が最も首の痛みに悩まされているのです。仕事のパフォーマンスや日常の活動が、気づかないうちに制限されている方は少なくないはずです。

頚部痛は、座位中心の生活が原因

 

頚部痛や腰痛は一つの原因から生じる単純な病気ではなく、多彩です。

姿勢の異常や睡眠障害に伴う筋肉の緊張、長すぎる座位姿勢や老化に伴う椎体や椎間関節の変性、交通事故や労働災害、スポーツ外傷などの要因が複雑に絡み合っています。

 

とりわけ現代社会に特徴的なのは、コンピュータやモバイル端末の普及に伴う座位中心の生活です。
更に、COVID-19パンデミック以降は、急速に広まったテレワークなどにより、人間工学的に不適切な環境(たとえばダイニングテーブルで一日中パソコン作業をする、ソファに座ってノートPCを膝に置くなど)で仕事をする人が増えました。この影響は、今もなお多くの人の首と肩に及んでいます。

頚部痛が原因での欠勤や生産性の低下による経済的損失

 

首の痛みは、個人の苦しみにとどまりません。社会全体の経済にも大きな影響を及ぼしています。

スペインの調査では労働者の12.3%が、ギリシャでは8.6%が、首の痛みによる欠勤(アブセンティーズム)を経験していると報告されています。

 

さらに見過ごせないのがプレゼンティーズムです。プレゼンティーズムとは、出勤はしているものの、痛みのせいで集中力が低下し、本来の生産性を発揮できない状態です。本人は、「痛いけど仕事を休めない」「なんとか耐えて、やっとの思いで仕事をしている」ため、仕事のパフォーマンスが上がらない状態です。これは、本人や企業にとって、とても大きな損失です。


第2章 若い世代にも忍び寄る頚部痛
   ・・・大学生の11のリスク(メタ解析)

 

「首が痛いのは年齢のせい」「自分はまだ若いから関係ない」
もし、そう思っている方がいたら、少し考えてみてください。

 

Gaoらが2024年にBMC Public Healthに発表したメタ解析は、大学生の頚部痛リスク要因を系統的にまとめた研究です。若い世代で、すでに何が首の痛みを引き起こしているのか。その結果は、年齢に関係なく現代人全体に当てはまる警告です。

メタ解析で特定された11のリスク

首の痛み(頚部痛)に関連する11のリスク要因をまとめたインフォグラフィック。首を押さえて悩む女性の背景に、外傷歴、不適切な枕、長時間のうつむき、ストレス、運動不足などの項目と、それぞれのオッズ比(OR)が記載されています。

この研究では、複数の研究を統合した結果、11の要因が大学生の頚部痛に統計的に有意な関連を持つことが特定されました。なお、オッズ比(OR)とは、その要因がある人がない人に比べて何倍、頚部痛を発症しやすいかどうかを示しています。

 

リスク要因 オッズ比(OR) 95%信頼区間 エビデンスレベル
高学年 2.86 2.07 – 3.95
頚部・肩の外傷歴 2.32 1.79 – 3.01
不適切な枕の使用 2.20 1.39 – 3.48
感情的問題(抑うつ等) 2.09 1.66 – 2.63
長時間のうつむき姿勢 2.04 1.58 – 2.64
不適切な座位姿勢 1.97 1.39 – 2.78
運動不足 1.88 1.53 – 2.30
夜更かし 1.80 1.35 – 2.41
女性 1.69 1.52 – 1.87 中等度
高ストレス 1.61 1.02 – 2.52 中等度
1日の電子機器利用(長時間) 1.53 1.33 – 1.76

身体的・物理的リスク要因 ― 枕・姿勢・うつむき動作

1. 頚部・肩の外傷歴(OR 2.32)

 

過去にケガをしたことがある人は、していない人の2.3倍以上、頚部痛を発症しやすいのです。過去の外傷が組織の脆弱性や神経の過敏性を引き起こし、痛みの再発・遷延の原因となっていると考えられます。

2. 不適切な枕の使用(OR 2.20)

 

枕の高さが合っていないことも、大きなリスク要因になります。高すぎたり、低すぎたり、硬すぎたりするなど、寝ている間に首が不自然な角度で固定されることで、頚椎への負荷が長時間かかり続けます。適切な高さと硬さの枕を選ぶことは、手軽で効果的な予防策のひとつですが、こだわり過ぎるのも禁物です。

 

ただし、「長時間のうつむき姿勢」によって、寝る前に既に頚部痛を強く感じているのであれば、枕があっているかどうかわかりません。

3. 長時間のうつむき姿勢(OR 2.04)

 

1回あたり、または1日の間に1時間以上うつむくことは、頻繁な頚部痛と関連しています。スマホを見る、本や手元の書類を読む、、、そんな日常動作が積み重なることで首に大きな負担がかかっています。パソコンやスマホの画面は、座っている時は特に目線の高さに維持するように心がけましょう。

4. 不適切な座位姿勢(OR 1.97)

 

貧乏ゆすり、脚を組む、頭を左右に傾けた状態でのデスクワークなど、座っているときの姿勢の崩れが頚部の痛みを生じさせます。

生活習慣のリスク要因 ― 運動不足・電子機器・夜更かし

5. 運動不足(OR 1.88)

 

週に3時間未満の運動しかしない、あるいは運動頻度が、週5回以下だとリスクが高まります。・・・ということは、適度な運動は筋骨格系の痛みに対して保護作用があるということですね。

6. 夜更かし(OR 1.80)

 

睡眠不足や遅い就寝時間が頚部・肩の軟部組織にダメージを蓄積させます。課題やプレゼンの準備のために夜更かしが続くことで悪化します。この現象は大学生に限らず、社会人の日常にも重なりますよね。

7. 1日の電子機器利用時間が長い(OR 1.53)

 

スマホやPCを、1日3時間を超えて使用していることがリスクになります。現代の生活において、この課題は達成し難い問題です。

心理社会的リスク要因(ストレスと感情)が痛みを増幅させる。

8. 感情的問題(OR 2.09)

 

頻繁に気分が落ち込む、イライラしやすい、神経質になるといった感情的な問題は、身体的なリスク要因と同等以上に頚部痛の発症に寄与しています。特に、抑うつ症状は強いリスク因子として特定されています。

9. 強いストレス(OR 1.61)

 

学業や将来への不安、職場の人間関係など、強い心理的ストレスは頚部痛の発生確率を高めます。

 

痛みは、単に「筋肉が硬いから」「姿勢が悪いから」だけで生じるわけではありません。痛みは末梢の炎症を脳に伝える神経の興奮によって生じている場合もあるのです。 ストレスや抑うつは、神経の興奮を誘発したり、脳の痛みの処理システムに直接的に作用して、末梢からの信号を増幅させます。つまり、同じ程度の筋肉の緊張であっても、ストレスを抱えている人は、より強い痛みとして感じてしまうのです。これは「中枢性感作」と呼ばれる神経の過敏化のメカニズムの一つで、近年の疼痛研究で明らかにされています。

人口統計学的リスク要因 ― 学年と性別

10. 高学年(OR 2.86)

 

本研究で最も高いオッズ比を示した要因です。学年が上がるにつれて学業負担は増し、研究や試験対策のために不適切な姿勢を維持する時間が長くなることや、就活などのストレスが背景として考えられます。つまり、私たちは積み重ねた年齢分の痛みを増幅させているかもしれません。

11. 女性(OR 1.69)

 

GBD 2021と同様、大学生においても女性の方が頚部痛を経験する割合が高いことが確認されました。女性は、痛みという警告と共に生きている人が多いのです。

 

このように、大学生における頚部痛においても、物理的な姿勢や習慣だけでなく、心理的な健康状態や学業環境とも密接に関連していることがわかりました。そして、この結果は、大学生だけの話ではありません。

 

社会人も、主婦も、高齢者も、そして受験勉強に直面している高校生以下の学生達も含めて、現代を生きる全ての人に当てはまる現実なのです。


第3章 座れば座るほどにリスクは上がる

「仕事がPC作業中心のデスクワークなんだから座るしかないやん!」
もちろん、そうですよね。では、いったいどのくらい座っていると頚部痛が出現するのでしょうか。

 

Mengらが2025年にBMC Public Healthに発表したメタ解析は、座位時間と頚部痛の関係を、時間ごとの「用量反応関係」として明確に数値化しました。

座位行動のタイプ別リスクでは、スマホが最も危険

 

座位行動のタイプ オッズ比(OR) 95%信頼区間 有意性
携帯電話の使用 1.82 1.27 – 2.61 有意(P < 0.001)
一般的な座位行動 1.77 1.53 – 2.05 有意(P < 0.001)
スクリーンベースの座位行動 1.27 1.14 – 1.42 有意(P < 0.001)
コンピュータの使用 1.23 1.08 – 1.40 有意(P < 0.01)
テレビ視聴 1.20 0.99 – 1.44 有意差なし

なぜスマホはリスクが高いのか?

 

それは、スマホを見るときに、私たちは自然とうつむき姿勢になるからです。パソコンは画面が目の高さに設定することができますので、画面を見ている時はうつむき姿勢を避けることも可能です。スマホは手元で操作するため、首の屈曲角度がはるかに大きくなります。この姿勢が頚椎への力学的ストレスを増大させるのです。

性別・職業による影響の違い ― 会社員のリスクは学生の1.6倍

 

座りすぎが頚部痛に及ぼす影響は、性別や職業によっても異なります。

社会人においても、女性のオッズ比は1.43、で対する男性1.13。そして、労働者のオッズ比は1.97で学生1.26を大きく上回りました。

 

労働者は学生よりも長時間にわたって固定的な座位姿勢を維持せざるを得ない環境にあることに加え、PC作業やミシン作業など、頚部への負荷が高い職種が含まれていることが影響していると考えられます。

座位時間の用量反応関係 ― 4時間で60%増、6時間で88%増

この研究で、最も重要なデータは、座位時間と頚部痛リスクの用量反応関係を明確にした点です。

一般的な座位行動(デスクワーク等)

デスクで首の疲れを感じている男性の背景に、座位行動のリスク数値を記載したインフォグラフィック。一般的なデスクワークでは1日4時間以上でリスク60%増、6時間以上で88%増。スクリーン利用(PC・スマホ)では1時間、2時間、4時間と使用時間が増えるごとにオッズ比(OR)が上昇することを示しています。

  • 1日4時間以上:リスク60%増加(OR 1.60)
  • 1日6時間以上:リスク88%増加(OR 1.88)

スクリーンベースの座位行動(PC・スマホ等)

 

  • 1日1時間以上:OR 1.28
  • 1日2時間以上:OR 1.35
  • 1日4時間以上:OR 1.45

 

デスクワークで毎日6時間以上座っている方は、そうでない方に比べて首の痛みを発症するリスクがほぼ2倍。加えてスマホを数時間使用していれば、リスクはさらに上乗せされることがわかりました。

 

「長時間座ること」と「スマホの使用」 、この現代人の日常を構成する二つの行動が、私たちの首に静かに負担をかけているのです。これは、見直しが必要です。

大阪市天王寺区にあるあづま脳神経外科リハビリクリニックの第2診察室に入ったら、あなたは驚くことでしょう。そこにいる我妻という医師は、朝から晩まで立ち続けて診療しています。いや、これ本当なんです。変わっているでしょ!


第4章 明日から始める5つの対策
   ・・・座りすぎによる首の痛み・腰痛を予防・改善する方法

 

ここまで3つの研究を見てきました。世界で2億人以上が首の痛みに悩み、その数は増え続けている。若い大学生ですら、姿勢、運動不足、ストレス、電子機器の使い過ぎによって首の痛みに苦しんでいる。そして、座る時間が長くなればなるほど、リスクは確実に上がっていく。

 

ここで、もう一度、冒頭の「一日の過ごし方」を思い出してください。

食卓に座り、電車で座り、デスクで座り、昼食時も座り、帰りの電車で座り、ソファで座る。

この座りっぱなしの生活を続ける限り、肩こり、首の痛み、腰痛は改善しません。むしろ、年齢を重ねるごとに悪化していく可能性が高いのです。背骨を支える靭帯がゆるみ、骨粗鬆症が進めば、「元に戻す」ことがどんどん難しくなります。

 

では、少し考え直してみたらどうなるでしょう。

今日の行動を変えるだけで、数年後の身体の形は大きく変わる可能性がある。

では、具体的にどんなことをすれば良いでしょうか。研究が示すエビデンスを踏まえて、明日から実践できることを整理してみましょう。

対策① 30分に1回、「座りっぱなし」を中断する

 

座位時間が4時間を超えるとリスクが60%上昇し、6時間を超えると88%上昇する。。。この用量反応関係が示すのは、「座る総時間を減らすこと」が最も直接的な対策であるということです。

 

といっても、仕事を辞めるわけにはいきません。大切なのは、座り続ける姿勢を自分で中断することです。

30分に1回、立ち上がって身体を伸ばす。トイレに行く。給湯室まで歩く。たったこれだけのことで、頚椎や腰椎にかかり続けている負荷を一時的にリセットできるのです。

スマートフォンのタイマーを30分にセットしてみてください。アラームが鳴ったら、1分でいいので立ち上がりましょう。

テレビやスマホを見続けている、あなたもですよ!

時々は立ち上がってくださいね!

対策② スマートフォンの持ち方と使用時間を見直す

 

スマートフォンの使用(OR 1.82)は、コンピュータ(OR 1.23)やテレビ(OR 1.20)と比べて突出して高いリスクを持っています。原因は、何度も繰り返していますが、うつむく姿勢です。

 

スマートフォンを使うときは、画面を目の高さに近づける意識を持ちましょう。腕が疲れるようであれば、テーブルの上にスマホスタンドを置く。電車の中では、手元ではなくできるだけ顔の正面でスマホを持つ。ほんの少しの工夫が、首への負担を大幅に軽減します。

また、1日の合計スクリーン時間が3時間を超えるとリスクが上昇し始めることを意識して、「なんとなく」スマホを触る時間を減らしてみたらどうでしょうか。無理ですかね・・・。

 

・・・このブログなら閉じてもいいですよ😅。。。

対策③ 週3時間以上の運動を習慣にする

 

運動不足のオッズ比は1.88。つまり、運動しない人は運動する人に比べて約2倍、頚部痛になりやすい。逆に考えれば、適度な運動は首や腰を守る「盾」になるということです。

 

激しいトレーニングは必要ありません。研究では、週3時間以上の運動が保護因子として機能することが示されています。1回30分のウォーキングを週に5〜6回。あるいは、軽いストレッチや体操を毎日15〜20分。これだけでも、筋肉のしなやかさを維持し、血流を改善し、痛みの閾値を上げる効果が期待できます。

 

特に、首や肩甲骨まわりのストレッチは、座位で硬くなった筋肉をほぐすのに有効です。デスクの前でもできる簡単な首回し、肩甲骨寄せ、胸を開くストレッチを日課にしてみてください。

対策④ 枕を見直して睡眠中の頚椎を守る

 

不適切な枕の使用(OR 2.20)は、意外にも高いリスク要因です。私たちは人生の約3分の1を寝て過ごします。その長い時間、首が不自然な角度に置かれ続けていたら、朝起きたときに首が痛いのは当然のことです。

 

適切な枕の条件は、仰向けに寝たときに頚椎の自然なカーブ(前弯)が維持される高さであること。高すぎず低すぎず、適度な支持力があること。個人差がありますので、寝具店で実際に試してから選ぶことをお勧めします。

対策⑤ ストレスケアで神経の過敏化(中枢性感作)を防ぐ

 

最後に、そして最も見落とされがちなポイントです。

感情的な問題(OR 2.09)と高ストレス(OR 1.61)が、身体的な要因と同等に頚部痛のリスクを高めるという事実を忘れないでください。

 

ストレスは、脳における痛みの処理システムを変化させます。慢性的なストレスや抑うつは、本来であれば「さほど痛くない」程度の信号を「とても痛い」と増幅して感じさせる神経の過敏化(中枢性感作)を引き起こします。マッサージを受けても、姿勢を正しても、心の疲れが溜まったままでは、痛みは取れないのです。

  • 十分な睡眠をとること。
  • 夜更かしを減らすこと。
  • 自分なりのリラクゼーション方法を見つけること。
  • 趣味の時間を確保すること。
  • 悩みを一人で抱え込まず、信頼できる人に話すこと。
  • 場合によっては、専門家に相談すること。

これらは「精神論」ではなく、痛みの改善に直結する医学的に意味のある行動なのです。


よくある質問(FAQ)

Q. 座りすぎは本当に首の痛みや腰痛の原因になりますか?

A. はい。2025年のメタ解析(Meng et al., BMC Public Health)によると、1日4時間以上の座位でリスクが60%増加、6時間以上で88%増加することが示されています。座位行動は頚部痛の主要なリスク要因です。

Q. スマートフォンの使用は首の痛みにどのくらい影響しますか?

A. スマートフォンの使用によるオッズ比は1.82で、コンピュータ使用(1.23)やテレビ視聴(1.20)よりも大幅に高いリスクがあります。うつむき姿勢による頸椎への力学的ストレスの増大が原因です。

Q. ストレスと首の痛みには関係がありますか?

A. 関係があります。メタ解析では、感情的問題(OR 2.09)と高ストレス(OR 1.61)が頚部痛の有意なリスク要因として特定されました。ストレスは中枢性感作(神経の過敏化)を引き起こし、痛みの信号を脳が増幅して感じさせるメカニズムが関与しています。

Q. デスクワーク中心の仕事で首や腰の痛みを予防するにはどうすればよいですか?

A. ①30分に1回は立ち上がって座位を中断する、 ②スマートフォンの画面を目の高さに近づける、 ③週3時間以上の運動習慣をつける、 ④適切な高さの枕を選ぶ、 ⑤ストレスケアを行う。この5つが、研究に基づく有効な予防策です。

Q. 女性の方が首が痛みやすいですか?

A. はい。GBD 2021研究では、女性の年齢標準化有病率は男性の約1.4倍(女性2,890人 vs 男性2,000人/10万人あたり)でした。頸椎や周囲筋の解剖学的な違いや、痛みの知覚に関する生物学的差異が関与しています。

Q. 座りすぎによる首の痛みを改善するための運動量の目安はどのくらいですか?

A. メタ解析では、週3時間以上の運動が保護因子として機能することが示されています。1回30分のウォーキングを週5〜6回、または軽いストレッチを毎日15〜20分行うことが推奨されます。

Q. あづま脳神経外科リハビリクリニックでは対応してもらえますか?

A. もちろんです。

 当院の「頭痛・頚部痛外来」はこちらから
 当院の「腰痛・坐骨神経痛外来」はこちらから


おわりに・・・痛みは「これからの生活」で変えられる

「痛みは、これからの行動で変えることができます。」というメッセージと、明るい部屋で気持ちよさそうにストレッチをする女性の写真。具体的な改善アクションとして「30分に一度立ち上がる」「スマホの画面を目の高さに上げる」「週に何度か身体を動かす」「枕を見直す」「ストレスをためこまない」の5項目がリストアップされています。

今、肩こりや首の痛み、腰痛に悩んでいる方。その痛みは、何年も積み重ねてきた「座りすぎ」の生活習慣がつくり上げたものかもしれません。

たとえそうであったとしても、痛みは、これからの行動で変えることができます。

  1. 30分に一度立ち上がる。
  2. スマホの画面を目の高さに上げる。
  3. 週に何度か身体を動かす。
  4. 枕を見直す。
  5. ストレスをためこまない。

どれも、特別な器具や高額な治療を必要としない、日常生活の中の小さな変化です。

しかし、それを毎日続けることで、5年後、10年後、20年後の身体は確実に違ってきます。


大阪市天王寺区にあるあづま脳神経外科リハビリクリニック、そこの院長の我妻にコロナ後に診察を受けた人は、ご存知だと思いますが、私は立って診療しています。私の外来は丁寧で長いため、待ち時間に対してお叱りを受けることもしばしばでした。(最近は、頑張って簡潔に伝わるような説明に努めていますよ!)


コロナ前の私は、朝9時から12時間以上、診察のために昼食もトイレも我慢して座り続けていました。その結果、頚椎症が悪化して手の痺れを自覚したり、腰痛を自覚するようになったのです。

医師である自分が、片頭痛や頚部痛、腰痛や背部痛を診察している自分が、痛みに苦しんでいたらダメだと一念発起して、2021年から私は立って外来診察をしています。おかげさまで、痺れは消失し、腰痛も感じません。

座りすぎの社会に生きる私たちは、座りすぎないように、俯かないように意識しなければ「痛みと共に生きる生活」を送り続けてしまうのです。

だからこそ、今日この瞬間から、少しだけ身体と心に意識を向けてみてください。

あなたの首と腰が、少しでも楽になることを願っています。


参考文献

  1. Global, regional, and national burden of neck pain, 1990–2020, and projections to 2050: a systematic analysis of the Global Burden of Disease Study 2021. The Lancet Rheumatology, 2024.
  2. Gao Y, Chen Z, Chen S, Wang S, Lin J. Risk factors for neck pain in college students: a systematic review and meta-analysis. BMC Public Health, 2024.
  3. Meng Y, Xue Y, Yang S, Wu F, Dong Y. The associations between sedentary behavior and neck pain: a systematic review and meta-analysis. BMC Public Health, 2025; 25: 453.

    免責

     

    本記事は一般的な医学情報の提供を目的としています。症状や治療は個人差があるため、心配な方は医療機関へご相談ください。

    急に手があげられなくなった、ろれつが回らなくなった、顔が歪んでいるなどの症状があれば救急受診が必要です。


    この記事の監修医師 当院院長 我妻 敬一(あづま けいいち)

     

    医療法人 華拓昇会 あづま脳神経外科リハビリクリニック
    〒543-0072 大阪市天王寺区生玉前町2-6

    専門医資格: 脳神経外科専門医/脳卒中専門医

    所属学会: 日本脳神経外科学会、日本頭痛学会、日本脳卒中学会、日本認知症学会など

    我妻院長の専門領域: 脳卒中、片頭痛、認知症、しびれ、ふらつき、坐骨神経痛

    当院の特徴: 当日MRI検査、専門医診療、神経難病外来、脳卒中・神経難病リハビリ、栄養指導

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