おはようございます。 あづま脳神経外科リハビリクリニックです。
先日、大阪脳卒中医療連携ネットワーク会議に出席してきました。
その中で、日本脳卒中協会 副理事の中山 博文 先生によるご講演があり、大変印象的なお話を伺いましたので、その内容の一部を共有いたします。
講演のテーマは「脳卒中予防と飲酒」
「お酒は百薬の長」と言われることもありますが、脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)に関しては、「少しなら大丈夫」とは言い切れないという内容でした。
近年の研究では、「適度な飲酒は健康に良い」という考え方は見直されつつあり、むしろ「飲酒量が少ないほど、脳卒中のリスクは低くなる」ことが明らかになってきています。
また、2025年に日本脳卒中協会が新たに発表した「脳卒中予防十か条2025」、そして厚生労働省が昨年公表した「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」でも、「飲み方」や「量」に注意を払い、飲酒との向き合い方を見直すことの大切さが強調されています。
🧾 日本脳卒中協会「脳卒中予防十か条2025」より
2025年に日本脳卒中協会が改訂した「脳卒中予防十か条」では、飲酒について次のように明記されています。
第5条 : 飲むならば なるべく少なく アルコール
この表現には、以前の「アルコール 控え目は薬 すぎれば毒」という表現からの大きな変化が見られます。
協会は「お酒を飲まない人が最も脳卒中の危険が少ない」と強調し、「少ないほどリスクが下がる」という考えを明確に打ち出しています。
その背景には、世界的に見ても「飲酒量がゼロに近いほど健康リスクが低い」という研究結果が多数報告されていることがあります。
脳卒中の予防だけでなく、がんや肝疾患などの面からも、飲酒量を減らすことの重要性が再確認されています。
📉 厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」より
2024年に厚生労働省が発表したガイドラインでは、「飲酒量の目安」と「健康的な飲み方」が具体的に示されています。
🔢 飲酒量の目安(純アルコール量)
ガイドラインでは、酒の種類にかかわらず純アルコール量で考えることを推奨しています。
性別 リスクが高まる目安(1日あたり)
男性 約40g以上(ビール中瓶2本、日本酒2合ほど)
女性 約20g以上(ビール中瓶1本、日本酒1合ほど)
また、一度に60g以上のアルコールを摂取する一時多量飲酒は避けるべきとされています。
💡健康に配慮した飲酒の仕方等について
ガイドラインでは、次のような健康に配慮した飲酒の仕方等についても紹介されています。
- 自らの飲酒状況等を把握する
- あらかじめ量を決めて飲酒をする
- 飲酒前又は飲酒中に食事をとる
- 飲酒の合間に水、炭酸水を飲むなど、アルコールをゆっくり分解・吸収できるようにする
- 一週間のうち、飲酒をしない日を設ける
また、「飲まない日を作る」「飲む量を記録する」など、自分の飲酒習慣を“見える化”することも、健康管理の第一歩になります。
お酒は、上手に付き合えば心をほぐす一方、飲み方次第で脳や血管を痛める「諸刃の刃」です。
脳卒中を防ぐためには、飲酒だけでなく「血圧管理」「食生活の改善」「運動習慣」「十分な睡眠」など、生活習慣全体を見直すことが大切です。
当院では、脳卒中の予防・再発防止・生活習慣改善をトータルでサポートしています。
管理栄養士による栄養指導や、医師・リハビリスタッフとの連携を通じて、患者さま一人ひとりに合わせた「脳を守る生活習慣」を一緒に考えてまいります。
厚生労働省 : 健康に配慮した飲酒に関するガイドライン https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001211974.pdf
日本脳卒中協会 : 脳卒中予防十か条 2025 https://www.jsa-web.org/citizen/85.html
脳卒中専門外来 : https://www.nougeka.info/stroke/