認知症の45%は、予防または発症を遅らせることができる・・・
これは、Lancet Commission 2024で発表された、私たちへの行動変容を促すメッセージです。
次回が2028年ごろになるので、現段階で認知症予防の考え方の最新版になります。
「いつまでも自分らしく、聡明でありたい」
死ぬよりも認知症になる方が嫌だって思っている人もいるでしょう。
我妻(あづま)は、自分らしく生きられなかったら死にたいって、本気で思っています。
「最近、物忘れが増えた気がする」「このまま家族の名前も忘れてしまうのだろうか……」
こうした不安を、私は何度も聞いてきましたし、自分もそう思う時があります。
脳の病気は、一度発症すると生活を大きく変えてしまいます。
そして、現代医学をもってしても、一度失われた神経回路を元通りに戻すことはできません。
脳神経外科専門医・脳卒中専門医として、多くの脳梗塞やくも膜下出血を発症された方々を診てきました。
まさに後悔先に立たずで、発症してからでは遅いのです。
認知症も脳の病気の一種です。なったら治りにくいのです。
だからこそ私は、「発症する前に守る」という視点を何よりも大切にして、外来診察をしています。
このブログは、そんな脳神経外科専門医が伝える、認知症予防の「道しるべ」です。
このブログでわかること
● 認知症の本当の恐ろしさは、BPSD(行動・心理症状)にある。・・・ではBPSDとは?
● 認知症の約45%は、「修正可能なリスク因子」対策で、予防または発症を遅らせることができること(Lancet Commission 2024)。
・・・では、その「修正可能なリスク因子」とは?
● 認知症の予防のこれだけは!
「若年期からの質の高い教育」:学びはいつでも始められます。今からでも遅くない!
「中年期からの難聴と悪玉コレステロール対策」:耳と目は大切に。食事と運動で悪玉対策を!
「高齢者の孤独回避」:多世代の仲間を得るために、コミュニティに属しましょう!
● 今日からできる「認知症予防のための10の提言」を大発表!
以上の4点を中心に、脳神経外科専門医がLancet Commission 2024を元に分かりやすく解説します。
大阪市天王寺区にあるあづま脳神経外科リハビリクリニックの物忘れ・認知症外来はこちら
認知症とは? 症状・原因・予防の基本
「認知症はどんな病気ですか?」 こう問いかけられたら、あなたはどう答えますか?
「物忘れがひどくなって、いろいろなことがわからなくなる病気」・・・そう答える方が多いでしょう。
間違ってはいません。しかし、それは認知症のほんの一側面にすぎません。
認知症の本質は、「人として当たり前にできていたこと」が、少しずつ奪われていく病気です。
あなたの尊厳が少しずつ削がれていく病気です。
認知症は、大きく「中核症状」と「BPSD(行動・心理症状)」という2種類の側面の症状があります。
ではまず、中核症状から説明してきましょう。
認知症の症状: 中核症状
認知症の中核症状は、脳の神経細胞が壊れることで直接起こる症状です。
以下の5つが代表的な中核症状です。
1. 記憶障害(もの忘れ)
さっき聞いたことを忘れる。 約束を覚えていられない。 怪我や旅行など体験したこと自体を忘れてしまう。
2. 見当識障害
今日が何月何日かわからない。 自分がどこにいるかわからない
3. 理解や判断力の低下
話の内容が理解できない。 欲しい物はお金を払って買うなどの適切な判断ができない
4. 失語症、失認と失行
言葉が出てこない。 骨折しているのに普通に歩こうとする。 リモコンの使い方が分からない
5. 遂行機能障害
コロッケを作ろうとしても、じゃがいもを茹でるのが先か、玉ねぎを炒めるのが先か、いつ形を整えて衣をつけるのか、手順がわからなくなる
こうした中核症状が現れると、ご本人はもちろん、ご家族も戸惑い困惑します。
けれども、周囲の理解と適切なサポートがあれば、住み慣れた場所で穏やかに暮らし続けることが可能な段階です。
認知症の「本当の怖さ」は、この先のBPSDにあります。
認知症の症状: BPSD

認知症の本当の恐ろしさは、中核症状ではありません。
ご本人とご家族の生活を根底から揺るがす症状は、BPSD(行動・心理症状)です。
BPSDによって、ご本人が長い人生をかけて築きあげてきた尊厳が、音もなく崩れていきます。
BPSDに対する適切な治療やケアがなければ、家庭崩壊とも言える深い苦痛を、お互いに感じるようになるのです。
以下は、私が外来でご家族から伺ってきた「声」であり、代表的なBPSDです。
1. 物取られ妄想
「大事にしまっていた通帳がなくなったのは、あんたが盗んだからでしょう!」・・・毎日疑われ、否定しても信じてもらえません。一番近くで支えている私が、一番疑われるのです。
2. 徘徊
「仕事に行かなきゃ」と言って外に出ようとするので、引き止めるとパニックになります。夜中にこっそり家を出て、警察に保護されたこともあります。いつか帰ってこられなくなるのではと、気が気ではありません。
3. 弄便(ろうべん)
トイレの使い方がわからなくなったのか、排泄物を手で触り、壁や服につけてしまいます。後片付けをしながら、情けなくて涙が出ます。誰にも相談できません。
4. 睡眠障害(昼夜逆転)
昼間はずっと居眠りしているのに、夜中になると起き出して「ごはんはまだか」と台所で騒ぎます。最近、ぐっすり眠れた日がありません。
5. 異食
テーブルの上の石鹸を、お菓子だと思って食べてしまいました。目が離せなくて、気が休まりません。
6. 介護拒否
お風呂に誘っても「さっき入った!」と怒鳴られたり、着替えてくれません。汚れているからきれいにしてあげたいのに、手を出せません。
7. 易怒性・暴力
温厚だった父が、別人のように豹変します。突然激昂し、暴力を振るってきます。父と暮らすことに恐怖感を感じています。
8. 無気力(アパシー)
好きだった将棋も全くやらなくなり、ただ座っているだけの毎日です。呼びかけても視線が合いません。
このほかにも、不安、抑うつ、幻覚、焦燥など、BPSDはさまざまな形で現れてきます。
認知症は「忘れるだけの病気」ではありません。
家族の生活の土台そのものが崩れていく病気なのです。
無気力の段階まで進んでしまった方に、「運動しましょう」「頭を使いましょう」と伝えても、もう届きません。
だから私は、発症してから慌てるのではなく、崩れる前にあなたを守りたいのです。
昨年もこんなことがありました。
予防の大切さをお伝えし治療していた患者さんがいつしか来られなくなりました。
数年後、家族に連れられて再び現れました。かなり進んでいました。
そのとき、まず最初に求められたのは、治療ではなく介護保険の主治医意見書でした
あのとき届けた言葉は、あの人には届いていなかった・・・何度も経験してきた、悔しい現実です。
家族は困り果てて、診察券をみて私のクリニックに連れてきました。
すでに予防薬はBPSDを増悪する可能性が高く使えない状態で、家庭を守るためにBPSD治療を行っています。
私は、薬を飲め!とは、このブログでは言いません。
認知症にならない習慣を身につけて欲しいのです。
認知症予防は、生まれたときから始まります。
未来の自分を守れるのは、今日からのあなたの行動です。
大阪市天王寺区にあるあづま脳神経外科リハビリクリニックの物忘れ・認知症外来はこちら
認知症の45%は、あなたの行動で変えることができる (Lancet Commission 2024)
かつて認知症は、老化に伴う避けられない現象と考えられてきました。
もちろん、今でも避けられない原因となる病気が多くあります。
遺伝的要因、パーキンソン病や進行性核上性麻痺などの神経変性疾患、脳卒中や頭部外傷による脳損傷
こうした脳自体の変化による認知症は、努力だけでは難しい。
でも、そんな病気がない人は、日常のあなたの行動や習慣をブラッシュアップすることで
予防または発症を遅らせることが期待できるのです。
Lancet Commission 2024は、私たちに希望を示しました。
認知症の約45%は、「修正可能なリスク因子」対策によって防げるのです。
遺伝だから仕方ない。
年だから仕方ない。
そう諦める前に、行動しましょう。
若年期(子ども〜学生)から初めておくこと
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寄与率 |
リスク因子 |
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5% |
低い教育水準 |
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低い教育水準
興味深いことに、重要なのは「教育を受けた年数」ではなく「教育の質」です。
読解力が認知症リスクに影響するという報告もあり、生涯を通じた知的活動、学び続けること、考え続けることの重要性が強調されています。
これは子どもだけの話ではありません。
大人になってからも、新しいことを学ぶ姿勢が脳を守ります。
中年期(おおむね40〜64歳)に、注意しておくこと
中年期は、認知症予防において最も重要な時期です。この時期のリスク因子が最も多く、かつ対策可能なものばかりだからです。
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寄与率 |
リスク因子 |
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7% |
難聴 |
高LDLコレステロール |
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3% |
うつ病 |
頭部外傷 |
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2% |
糖尿病 |
喫煙 |
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高血圧 |
運動不足 |
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1% |
肥満 |
過度の飲酒 |
難聴
難聴になると、会話や周囲への関心が薄れていきます。音のない世界は関心の欠如を生み、脳の活動を低下させてしまいます。
Lancet Commission 2024によれば、難聴があると認知症の発症リスクは37%上昇し、聴力が10dB下がるごとにリスクはさらに16%ずつ積み上がります。
しかし、補聴器の使用があなたの未来を変えてくれるかも知れません。約12万人のデータ解析により、補聴器の使用は認知症発症リスクを17%減少させ、認知機能の低下を19%抑制することが証明されました。特にリスクの高い層では、3年間で認知機能の低下を48%も防いだという報告もあります。
大切なのは、補聴器を「会話のためだけ」に使わないこと。周囲の気配を常に感じておくためにも、起きている間はずっと装着し、体の一部として使い続けましょう。
高LDLコレステロール
健康診断で「LDLコレステロールが高い」と言われても、痛くもかゆくもない。だから放置してしまう・・・あなたもそうでしょうか?しかし、この「悪玉コレステロール」は静かに血管を蝕み、心筋梗塞や脳梗塞の引き金となります。
そしてLancet Commission 2024は、認知症との関連も明らかにしました。高血圧と並ぶ「サイレント・キラー」への対策が、未来の脳を守る鍵です。
うつ病
中年期のうつ病が10〜14年後の認知症リスクを2.25倍に高める新たなメタ解析結果が示されました。
さらに、薬物療法・心理療法によるうつ病治療が認知症リスクを31%低下させる可能性が報告されています
頭部外傷
ラグビーなどのスポーツで、くりかえし頭部を打撲すると、神経変性疾患リスクを高まることがわかっています。
また自転車やバイクなどでの交通事故にも気をつけておきましょう。ヘッドギアやヘルメットをつけて対策をしておきましょう。
糖尿病
高血糖は血管を傷つけ、脳への血流を障害します。また、インスリン抵抗性がアルツハイマー病の発症に関与するという研究もあります。
まずは発症しないこと。発症したら、しっかり治療を続けることが重要です。
喫煙
2020年まで、喫煙は「高齢者」が注意することに分類されていました。今回、「中年期」のリスク要因に再分類されましたが、これは当然でしょう。
禁煙により、認知症リスクが低下することも判っていますので、できるだけ早期に禁煙しましょう。
高血圧
高血圧は「サイレント・キラー」の代表です。脳疾患において、天敵が高血圧です。
自覚症状がないまま血管を傷つけ、脳卒中や認知症のリスクを高めます。
家庭血圧で125/75mmHg以下を目標に、日々の管理を習慣化しましょう。
運動不足
運動不足は、肥満・糖尿病・高血圧など他のリスク因子とも連鎖します。
目安は週150分の中強度運動。まずは1日20分のウォーキングから始めてみませんか?
肥満
肥満は慢性炎症を引き起こし、脳にも悪影響を及ぼします。特に内臓脂肪型肥満は要注意です。
急激なダイエットではなく、続けられる食事と運動の習慣が大切です。
過度の飲酒
適量を超えた飲酒は、脳の萎縮を加速させます。「適量」は純アルコールで1日20g程度(ビールなら500ml、日本酒なら1合程度)。
休肝日を設け、量と頻度を見直しましょう。
高齢者になったあなたがやるべき、認知症対策
高齢者(65歳以上)
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寄与率 |
リスク因子 |
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5% |
社会的孤立 |
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3% |
大気汚染 |
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2% |
未治療の視力低下 |
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社会的孤立

社会的孤立は高齢期における認知症の最大リスク要因です。
孤独は静かに、しかし確実に、脳を蝕んでいきます。
アドラーは「人の悩みのすべては対人関係にある」と言いました。
確かに、人間関係は時にストレスの源となり、過度なストレスはうつ病を招き、認知症リスクを高めます。
けれども、思い出してください。誰かと話し、笑い、感情を共有したあの瞬間を。
悩みの多くが対人関係から生まれるとしても、喜びや楽しみの多くもまた、対人関係から生まれます。
歩かなければ、歩けなくなり、歩きたくなくなります。
人に会わない生活が、人に会う必要性を失わせ、一人でいることに順応させます。
外出しない日々が続けば、何もしないことが当たり前になり、気づいたときには何もできなくなっている。
これは、私が外来で何度も目にしてきた患者さん達の現実です。
気心の知れた親友、仲睦まじい夫婦での外出。それはかけがえのない時間です。
しかし、もしどちらか一方が病に倒れたら、残された方はどうなるでしょうか。
行き場を失い、孤独に陥るリスクが高いのです。二人だけの世界は、美しくも脆いのです。
だからこそ、相手も誘って、幅広い世代が集うコミュニティに、今のうちから参加してください。
囲碁や将棋のクラブ、カラオケサークル、グラウンドゴルフ、地域の歴史研究会、ハイキング仲間・・・なんでも構いません。
大切なのは、「あなたがいないと寂しい」と言ってくれる人を、複数の場所に持っておくことです。
孤独という最強の敵を遠ざけること。それが、認知症を防ぐ最も確かな方法です
未治療の視力低下
目は脳の一部分であるって知ってましたか?実は網膜や視神経は中枢神経に分類され脳そのものなのです。
単なるカメラではありません。
脳が外界を「見る」ために、頭蓋骨の外へ飛び出した神経組織なのです。
脳は外部からの刺激で活性化されます。視覚情報はその最大の供給源。
視力が衰えることは、脳への栄養が足りなくなっていくことと同じなのです。
そして、怖いのは放置された目の病気です。緑内障や白内障、網膜色素変性症、糖尿病性網膜症・・・。
まだ見えるからと先送りにしていると、脳への情報は日に日に減少し、認知機能は低下していきます。
眼鏡で見えやすくすること。白内障の手術を受けること。緑内障の点眼を続けること。
これらはすべて、脳への「情報の入り口」をケアする行為、つまり認知症予防につながる行為なのです。
眼科の先生から治療を勧められているなら、あなたの未来を守るためにも、しっかり話を聞いて下さい。
予防は「掛け算」で効く:多因子介入という考え方

このように、認知症は原因がひとつではありません。
こんなにも、予防するべきことがある。「こんなこと、全部できるわけないやんっ!日暮れるわ!」って私も思います。
でも全部やったら、認知症のリスクが半減します。
病気は遺伝的素因と環境的素因の掛け算で発症します。
親が早くから認知症で苦労した人は、できるだけ早く始めて習慣化しましょう。
運動・食事・認知トレーニング・血管リスク管理などを組み合わせる
多因子介入(multidomain intervention)が大切であるとされています。
脳は体重のわずか2%ほどの臓器ですが、非常にエネルギーを使います。
だから、血管を守って、栄養と酸素を安定的に届けないと、脳は過疎地化してしまいます。
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介入領域 |
具体的なアクション |
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運動 |
週150分の中強度運動、デュアルタスク(コグニサイズ) |
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食事 |
MIND食(緑葉野菜、魚、ナッツ、オリーブオイル) |
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認知活動 |
読み書き、新しい趣味、知的刺激 |
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血管管理 |
血圧130mmHg以下、LDLコレステロール、血糖値の徹底管理 |
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今日からできる認知症予防の「10の提言」
ここからは、難しい話を「今日からできる行動」に落とします。
無理なく続けられる形で、ひとつずつで構いません。
1)学び続ける(大人も)
脳は使うほど強くなる側面があります。
新しい趣味、学び直し、読書、語学など、刺激は財産です。
好奇心こそが認知症の最大の薬です。
認知症が悪化すると、好奇心が全くなくなります。
それを私たちは無気力と言っています。
2)難聴を放置しない(必要なら補聴器や集音機能のあるAir Podsなど使いましょう)
会話が減ると、脳の活動も減りやすくなります。
耳鼻科で評価し、必要なら補聴器も前向きに検討しましょう。
でも、補聴器って少しずれるだけで変な音がなってしまいますよね。
Air Podsなどの集音機能があるイヤホンで対応できる間は、それでも良いかも知れません。
3)視力低下を放置しない(眼科で治療)
白内障など、目の中でも中枢神経ではないカメラ機能などに関する病気は改善可能です。
見えにくく感じたら、眼科の先生と相談して、脳の情報の入口である眼はしっかり守りましょう。
4)うつ・ストレスは我慢していると悪化します
眠れない、気分が落ち込む、やる気が出ない。
こうした状態は、脳の健康にも影響します。早めに認定心理士や臨床心理士の先生に相談するか、
精神科や心療内科に受診しましょう。
どんな病気も、悪化する前の対策が必要です。
5)頭部外傷を防ぐ(ヘルメット・転倒対策)
軽い打撲でも積み重なると影響し得ます。
スポーツや自転車は頭部外傷の温床と言えるかも知れません。
怪我や転倒リスクに備えて、ヘッドギアやヘルメットを必要に応じて使いましょう。
6)運動は「脳を守る習慣」
目安は週150分(まずは散歩からでも十分です)。
歩行+簡単な計算など、頭を使いながら動くのも良い方法です。
私のブログでは繰り返し説明していますが、運動によって筋肉から分泌される「イリシン」という物質は、
海馬に到達し、BDNF(脳由来神経栄養因子)という物質を増やしてくれます。
このBDNFこそが、「脳の肥料」とも呼ばれる物質で、新しい神経細胞を生み出したり、神経同士のつながりを強くしたりする働きがあります。
年齢に関係なく、学習・記憶機能の維持に重要な役割を果たしてくれます。
だから筋肉を動かすことが、とても大切なのです。
7)禁煙・節酒
喫煙は血管を収縮させたり拡張させたりするため、脳梗塞とくも膜下出血の原因になります。
飲酒もクモ膜下出血や脳内出血の原因になります。
どちらも「量」や「頻度」を見直すだけでも意味があるので、減煙、節酒から初めて、
できれば禁煙、機会飲酒レベルにしましょう。
8)生活習慣病を本気で管理する(血圧・脂質・血糖)
高血圧、脂質異常症(特に高LDLコレステロール血症)、糖尿病は、脳の血管を破壊していく病気です。
特に中年期からの管理が重要です。
9)体重を適正に保つ
急激な減量ではなく、適切な体重を維持することが大切です。
できる範囲で続く方法を身につけましょう。
なお、痩せすぎもよくありません。筋肉は体重に比例して維持されるからです。
ボクシングや柔道に階級がある理由です。相撲取りが体重を増やす理由です。
とくに女性はホルモンの関係で筋肉量が男性よりも少ないため、
痩せすぎは避けましょう。適度な脂肪も必要です。
10)孤立しない(コミュニティに属する)
囲碁将棋、麻雀、カラオケ、茶道華道、散歩仲間、地域活動。
何でも構いません。「誰かと関わる場」を持つことが大切です。
1分セルフチェック:改善できるポイントはありますか?
当てはまる項目が多いほど、「今から改善できる余地」があります
血圧が高い・甘い物が好き・A5ランクのステーキやマグロのトロが好き
あまり運動できていない
最近、よく太ったと言われる。ベルトがたしかにきつくなってきた
よくタバコを吸っていたし、お酒もよく呑む
勉強は苦手だったし、今でも難しい話にはイライラしてしまう
目や耳が悪くなっているけど、眼科や耳鼻咽喉科で診てもらったことがない。
なんか心配ごとが多くてしんどい。 会社や家族関係がストレスで、あまり寝られない。
大きな交通事故で頭を打ったり、お酒を飲んで転倒して大きなたんこぶを作ったことがある
最近、友達が亡くなって、人と話す機会が減った。 引っ越ししたから、周りに知った人がいない
チェックが付いたところから、ひとつで構いません。
今日のひとつの選択が、数年後の自分を守ります。
受診の目安:「年のせい」で片づけないでください
次のような変化がある場合は、早めの評価をおすすめします。
● 物忘れが酷くて、生活に支障が出てきたと感じている
● 同じ話を何度も繰り返すようになったと言われる
● 段取りが悪い。 支払いの期日を守れない。 薬をどうしても飲み忘れてしまう
● あやうく信号無視をしそうになった。 仕事や家事でミスが増えたと注意される
● 性格が変わったと言われる。 たしかに怒りっぽくなった。 最近やる気が出ない。
● 家族から、なんか様子がおかしいよと言われるようになった。
認知症はアルツハイマーだけではありません。
脳梗塞や脳腫瘍、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、甲状腺機能低下症などが隠れていることもあります。
早期に見つけて対処しておいたら、手遅れにならなかったかも知れません。
「念のため」のMRIが、あなたの将来を守ります。
よくある質問(FAQ:10個)
Q1. もの忘れと認知症はどう違いますか?
A. もの忘れは「体験の一部を忘れる」ことが多いのですが、認知症は「体験そのものをわすれてしまう」ことが多くなります。また、認知証はあらゆることに対する認知ができなくなります。詳しくは、中核症状とBPSDの項目を参照ください。
Q2. 認知症は本当に予防できますか?
A. 確実に防げる訳ではありませんが、リスクを下げることができたり、発症を遅らせる事ができます。
Q3. 45%という数字は、誰にでも当てはまりますか?
A. 個人差はあるでしょう。 だとしても「改善できる要素が大きい」という意味で、取り組む価値の高い数字です。
Q4. 40代・50代から始めても間に合いますか?
A. むしろ中年期は重要です。難聴、血圧、脂質、血糖、運動不足の改善が将来のあなたの認知症を予防する鍵となります。
Q5. 難聴がなぜ認知症と関係するのですか?
A. 会話や社会参加が減りやすく、脳への刺激が減ります。また「聞き取る努力」に脳の資源が割かれることも影響します。
Q6. 補聴器は認知症予防になりますか?
A. 難聴への早期介入は認知症予防において、重要性が高まっています。補聴器の使用は認知症発症リスクを17%減少させ、認知機能の低下を19%抑制することが証明されました。特にリスクの高い層では、3年間で認知機能の低下を48%も防いだという驚くべき結果も報告されています。まずは耳鼻科で評価し、必要性を相談するのが第一歩です。
Q7. 運動はどれくらい必要ですか?
A. 目安は週150分の中強度運動です。 まずはウォーキングから始めましょう。 隣の人と話すことがしんどくなる程度の速さで歩くと効果が高まります。
Q8. 食事で気をつけることは?
A. 続けられる健康的な食事が基本です。 野菜・魚・ナッツなどを増やし、過剰な糖分や加工食品を控えましょう。
Q9. MCI(軽度認知障害)は治りますか?
A. MCIの状態から正常に回復する確率は16〜46%程度です。 早期から生活改善や原因評価に取り組むほど、良い方向が期待できます。
Q10. どのタイミングで脳の検査を受けるべきですか?
A. 生活に支障が出る物忘れ、ご家族が違和感を感じる変化があればお早めに。 チェック項目でどれかが引っかかれば、受けてみても良いでしょう。
おわりに:未来の自分への、今日からの贈り物
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
いつも長いブログですみません。
でも、最後まで読んで下さったあなたは、きっと「自分ごと」として受け止めてくださったのだと思います。
そして、今日から、あなたの行動は変わることでしょう。
認知症は、ある日突然やってくる病気ではありません。
長い年月をかけて、静かに、少しずつ進んでいく病気です。
だからこそ、「今日の行動」が、10年後、20年後の自分を形づくります。
難聴を放置しない。血圧を測る。誰かと話す。外に出る。
どれも、特別なことではありません。
でも、その「当たり前」を続けられるかどうかが、未来を分けるのです。
私は脳神経外科医として、多くの患者さんを診てきました。
脳梗塞で半身が動かなくなった方。くも膜下出血から奇跡的に生還した方。
そして、認知症が進み、ご家族の顔もわからなくなった方。
「あのとき・・・なんで・・・」 何度、その言葉を聞いたかわかりません。
だから私は、「発症してから治す医療」ではなく、「発症する前に守る医療」を届けたいのです。
認知症の約半分は予防できる、あなたの行動で変わる未来があるのです。
今日からできる認知症予防の「10の提言」の何かひとつだけ、今日、行動してみてください。
明日からではなく、今。
あなたが寝るところなら、今日一日あったことを呟いてみましょう。
リアリティ・オリエンテーションですね!
詳しくは前回のブログを読んでみてください。
久しぶりに誰かに電話をかける。 散歩に出る。
あづま脳神経外科リハビリクリニックの脳ドックを予約する(笑)
補聴器の相談に行く。 眼科を受診する。 何でも構いません。
その小さな一歩が、未来の自分を守る「最初の処方箋」になります。
「いつまでも自分らしく、あなたらしく生きてほしい」
その願いを叶えるために、私はこれからも、あなたのBrain Health Partnerとして発信していきます。
大阪市天王寺区にある、あづま脳神経外科リハビリクリニックでできること
当院では、物忘れ・認知症外来(全日受診可能)で
● 認知症リスク因子の確認(血圧・脂質・血糖・生活習慣)
● 生活の立て直し(運動・食事・睡眠・社会参加の設計)を行っています。
「心配だから一度チェックしたい」 その気持ちが、未来を守ります。
あなたのBrain Health Partnerでありたい
私たちは、大阪市天王寺区のあづま脳神経外科リハビリクリニックです。
用語ミニ解説
● BPSD(Behavioral Psychological Symptoms of Dementia):認知症に伴う行動・心理症状で、徘徊、妄想、興奮、不安などの総称
● MCI(軽度認知障害):認知症になる可能性がある状態
● 認知予備能:脳の“余力”。学びや社会活動で高められる
● 多因子介入:運動・食事・血管管理などを組み合わせる戦略
参考文献
● Livingston, G., Huntley, J., Liu, K. Y., et al. (2024). Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission. The Lancet, 404(10452), 572-628. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(24)01296-0
● Ngandu, T., Lehtisalo, J., Solomon, A., et al. (2015). A 2 year multidomain intervention of diet, exercise, cognitive training, and vascular risk monitoring versus control to prevent cognitive decline in at-risk elderly people (FINGER): A randomised controlled trial. The Lancet, 385(9984), 2255-2263. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(15)60461-5
● World Health Organization. (2019). Risk reduction of cognitive decline and dementia: WHO guidelines. World Health Organization.
● Sugimoto, T., Saito, S., Ihara, R., et al. (2023). Effect of a multidomain intervention on cognitive function in Japanese older adults with mild cognitive impairment: The J-MINT randomized clinical trial. Alzheimer's & Dementia. https://doi.org/10.1002/alz.13374
● 日本神経学会, 日本認知症学会, 日本老年精神医学会, 他(編). (2017). 『認知症疾患診療ガイドライン2017』. 医学書院.
免責
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としています。症状や治療は個人差があるため、心配な方は医療機関へご相談ください。
急に手があげられなくなった、ろれつが回らなくなった、顔が歪んでいるなどの症状があれば救急受診が必要です。
この記事の監修医師 当院院長 我妻 敬一(あづま けいいち)
医療法人 華拓昇会 あづま脳神経外科リハビリクリニック
〒543-0072 大阪市天王寺区生玉前町2-6
専門医資格: 脳神経外科専門医/脳卒中専門医
所属学会: 日本脳神経外科学会、日本頭痛学会、日本脳卒中学会、日本認知症学会など
我妻院長の専門領域: 脳卒中、片頭痛、認知症、しびれ、ふらつき、坐骨神経痛
当院の特徴: 当日MRI検査、専門医診療、神経難病外来、脳卒中・神経難病リハビリ、栄養指導





